需給動向 海外

◆米 国◆

酪農家の収益性悪化により、
2月の生乳生産量は前年を下回る


◇絵でみる需給動向◇


2月の生乳生産量は、4カ月ぶりに前年同月を下回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が3月19日に公表した「Milk Production」によると、2月の生乳生産量は、前年同月比3.5%減の714万トンとなり、4カ月ぶりに前年同月を下回る水準となった。なお、搾乳牛飼養頭数(923万頭)は前年同月比0.3%減、月間の1頭当たり乳量(774キログラム)は同3.2%減となった(表3)。
表3 2月の生乳生産の概況
資料:USDA/NASS「Milk Production」
 4カ月ぶりの生乳生産量の減少は、1頭当たり乳量の減少による影響が大きい。搾乳牛飼養頭数は、2012年の干ばつの影響を受けて9月以降前年を下回る水準で推移している一方、1頭当たり乳量は10月以降前年を上回る水準で推移していたが、2月は5カ月ぶりに減少に転じた。飼料費が増加傾向で推移しているなかで、生乳の増産が続いたことから、乳価が下落している(図18)。これにより酪農家の収益性の悪化が進んだことで、1頭当たり乳量の減少につながったとみられる。

飼料穀物高の影響が長引くカリフォルニア州

 米国全体で見ると、2月の生乳生産量は前年同月を下回る水準となったが、生産状況は地域により異なっている。全米における生乳生産量第1位のカリフォルニア州と第2位のウィスコンシン州の2月の生産量を比較すると、カリフォルニア州は前年同月を8.0%下回る一方、ウィスコンシン州は0.3%上回っている。カリフォルニア州の生産量減少は1頭当たり乳量の減少によるものである。飼料を外部からの購入に頼るカリフォルニア州では、飼料穀物価格の高騰の影響が長引いており、飼料の質を落とすなどの対応が続いている。

図18 酪農家の収益性(乳価−飼料費)の推移
資料:USDA/NASS「Agricultural Prices」
  注:飼料費は、乳価の算定基礎となるタンパク質含有量16%飼料の価格を「Agricultural Prices」
    の公表数値より試算したもの

飼料穀物価格の下落と強い輸出需要の下、生乳生産量は増加の見込み

 しかしながら、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は3月14日公表の「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」では、2013年の搾乳牛飼養頭数は2012年を0.4%下回るものの、1頭当たり乳量は同1.2%上回ることから、生乳生産量は同0.8%上回る9158万トンと予想している。この増産は、飼料穀物価格が下落し、強い輸出需要も続くとの見込みの下での予測となっている。

 酪農生産に影響を与える飼料穀物価格については、2012年の干ばつの影響による大幅な減収により、トウモロコシなどが高騰した。例えばトウモロコシのシカゴ先物相場は、2013年4月上旬には1ブッシェル当たり6ドル(トン当たり2万2400円:1米ドル=95円)台前半まで値下がりしているが、過去と比べれば依然高い水準となっている。しかしながら2013/14年度については増産が見込まれることから、USDAは2013年農業アウトルック・フォーラムにて、生産者販売価格は1ブッシェル当たり4.80ドル(同1万8000円)まで下落すると予想している。飼料穀物価格の下落は、今後、酪農家の生産意欲向上につながるものと考えられる。

 2月の米国乳製品輸出量は、好調なチーズ需要の下、前年同月比4.1%増の14万6千トンとなり、2カ月連続で前年同月を上回って推移している。なお、世界有数の乳製品輸出国であるニュージーランドが干ばつに見舞われ、生乳生産量が当初見込みを下回ると予想されるため、同国産乳製品価格が上昇している。これにより今後、米国産乳製品の価格優位性が高まり、米国産乳製品の需要が拡大するものと予想され、ERSは2013年の乳製品輸出量を、無脂乳固形分ベースで前年比3.3%増、乳脂肪ベースで同6.8%増と見込んでいる。

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