欧州食品安全機関(EFSA)が7月下旬に発表したクローン動物に関するリスクアセスメント結果(既報
http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/eu/eu20080728.htm)によりクローン動物およびその代理母において健康、福祉上の問題および高い致死率が明らかとなったことや欧州議会側がクローニング技術の使用により欧州の農産物のイメージが損なわれることを恐れたことが今回の採択理由とされている。
前述のリスクアセスメント結果では、「クローンまたはそれらの子孫から生産された牛乳および牛・豚の食肉の安全性の評価については、現在の知見に基づけば、健康な牛・豚のクローンおよびそれらの子孫から得られる食品とクローンでない健康な個体から生産されるものとの間に差異は見られない。」という見解もあったが、少なくとも今回のプレス発表にはこの点は全く触れられていない。
リスクアセスメント結果では、クローン動物の子孫やクローン動物の精液・受精卵の利用については、科学的な見地から否定的な見解は示されていなかったと見ることもできたが、これらも含めた形で禁止の採択がなされたことで、当面EU域内で何らかの形でクローン技術を応用した畜産物が食卓に上る可能性は無くなった。
当該プレス発表の中で、欧州委員会のアンドゥルラ・バシリウ保健担当委員が、「家畜衛生・公衆衛生関して深刻な脅威をもたらす場合は、国際貿易規則にのっとり、第三国からの食品の輸入を停止することができる。これまでに実施された研究およびEFSAの意見に基づけば、欧州委員会は(輸入)制限を課すべきかどうか検討することになろう。」と言及したことが紹介されているが、これは、今回採択された輸入禁止の勧告が科学的に正当化され得るかどうかを意識した発言とみられる。