米国の農業政策の枠組みを決める包括農業法は、おおむね5年に1度改正される。今回の農業法をめぐる議論は、米国農務省(USDA)が新農業法に関する政府提案を公表した2007年初めから活発化し、同7月の下院法案(H.R.2419)可決、同12月の上院法案(H.R.2419修正法案)可決を経て、2008年5月には両院協議会報告書を受けた包括農業法案(H.R.2419最終法案)が上下両院で可決されていた(下院可決が5月14日、上院可決が同15日。
2008年5月14日付け海外駐在員情報参照(
http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/us/us20080514.htm)
この包括農業法案は、大統領の拒否権発動を覆すために必要な2/3の賛成票を上回る大差で可決されたため(下院は318対106、上院は81対15)、大統領が拒否権を発動しても議会の再可決で法律が成立することは確定的だったが、大統領は「不適切な法律には反対する」という原則を重視して5月21日に拒否権を行使した。
この際、大統領が拒否権を発動した法案の正本から貿易関連の規定が欠落していることが判明したが、議会はこれを欠いたままの農業法の可決を急ぎ、5月21日に下院(316対108)、同22日に上院(82対13)で再可決することで大統領の拒否権発動を覆した。この結果、貿易関連条項を除く新農業法(P.L.110-234)は5月22日の時点で成立することとなった。しかし、貿易関係の規定を含む2008年農業法については、改めて一連の議会手続きを経る必要が生じていた。