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輸出税の引き下げによりトウモロコシと小麦の増産を期待(アルゼンチン)

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 アルゼンチン政府は1月8日、2006年12月トウモロコシと小麦の輸出税を引き下げたことに続き、(http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/ar/ar20081226.htm)、トウモロコシと小麦の増産量に応じて輸出税をさらに引き下げることを定めた国家農牧取引監督機構(ONCCA)決議112/2009号を公布した。

 経済成長水準の維持と国内需要の確保のため、生産者に増産意欲を与えることが目的としている。

 同決議によると、全国生産量でトウモロコシ1,500万トン、小麦1,300万トンを基準に、100万トン上回るごとに経営規模に応じて、輸出税を引き下げる仕組みとなっている。なおトウモロコシは2,500万トン、小麦2,300万トンを超えた生産については、輸出税は引き下げられない。

 農業経営者は、自身の経営規模をONCCAに申請した上で、輸出税の還付相当額が所得税から控除される仕組みとなっている。

 しかしながら、同決議に対する生産者団体の反応を見ると、輸出税の引き下げが、生産者の意志で決定できる作付面積でなく、天候要因など不測の要因にも影響される生産量で決定されることに不満を述べている。
(表1)決議112/2009号から算出した経営規模別輸出税率

現状の農産物の価格水準からみると増産に弾みをつけることは困難

 肥沃なパンパで生産された大豆は、約3割の農家が肥料を利用しないなど投入資材が少なくて済み、他作物に比べ高い収益が期待できることから年々、作付が拡大している。
(表2)アルゼンチンの主な作物の生産状況
 表3は、2008/09年度の生産量(予測値)を基準に、トウモロコシ生産量を1,600万トンから3,000万トンまで伸ばした場合の合計所得の変化について、筆者が試算した表である。

 トウモロコシの全国生産量が2,500万トンに達するまでは、合計所得は減少する。これは、トウモロコシの単位面積当たりの所得が大豆に劣ることによるものであり、トウモロコシ増産は合計所得向上に結びつかないとみられる。仮に、トウモロコシの全国生産量が2,500万トンに達した場合、輸出税が大きく軽減されるため、これを目指して増産が進む可能性はある。しかし、実際そのような取組が始まった場合、大豆市場価格の上昇要因となり、再び大豆の生産量が増加するとみられる。

 また、表4は同様に小麦生産量を1,100万トンから3,000万トンまで伸ばした場合の試算である。

 小麦については、豪州での生産回復などにより農家販売価格が低下しているため、小麦の増産は収益向上に結びつかないとみられる。

 同決議は、生産者にトウモロコシと小麦の増産意欲を与えるための措置であるが、収益は農産物の市場価格に大きく影響されるため、同決議による施策だけでは、トウモロコシと小麦の増産に大きな弾みをつけることは難しいとみられる。

(表3)トウモロコシの増産による合計所得の変化
(表3)トウモロコシの増産による合計所得の変化
注: 試算の前提条件
(1) 作付面積の合計(とうもろこし+大豆+小麦)は一定とし、トウモロコシの作付面積増加分は大豆の面積が減ると仮定
(2) 大豆と小麦の農家販売価格は一定、トウモロコシの農家販売価格は輸出税率の引き下げ割合に応じて上昇
(3) 2008年12月の生産費、農家販売価格を基に試算
(4) 合計所得は、トウモロコシ、大豆、小麦それぞれの「1ha当たり所得(=販売価格−経費)×作付面積」の合算
(表4)小麦の増産による合計所得の変化
(表4)小麦の増産による合計所得の変化
注: 試算の前提条件
(1) 作付面積の合計(とうもろこし+大豆+小麦)は一定とし、小麦の作付面積増加分は大豆の面積が減ると仮定
(2) 大豆とトウモロコシの農家販売価格は一定、小麦の農家販売価格は輸出税率の引き下げ割合に応じて上昇
(3) 2008年12月の生産費、農家販売価格を利用
(4) 合計所得は、トウモロコシ、大豆、小麦それぞれの「1ha当たり所得(=販売価格−経費)×作付面積」の合算
【松本 隆志 平成21年1月15日発】
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