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国際金融危機の影響で食肉輸出が急減(ブラジル)

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 2008年9月の米国に端を発する国際金融危機の影響で、ブラジルの食肉主要輸出先国であるロシアなどからの需要が減少したことなどから、2008年11月および12月の同国の食肉輸出は急減した。

鶏肉輸出の減少は日本の在庫増加なども影響

 開発商工省貿易局(SECEX)によると、ブラジルの2008年11月および12月の鶏肉輸出(丸どり、パーツの合計)は、数量で前年同期比同15.7%減の約44万7千トン、金額で同12.9%減の約7億1,700万ドル(約63億8千万円:1ドル=89円)となった。

 なお、2008年の輸出については、数量で前年比8.7%増の326万8千トン、金額で同38.0%増の58億2千万ドル(5,180億円)となった。

 輸出の減少は、主要輸出港であるサンタカリナ州のイタジャイ港が2008年11月の洪水被害で一部操業を停止したことなども影響している。
鶏肉の輸出量および金額
 ひな生産者協会(APINCO)によると、国際金融危機の影響に加え、最大の輸出先国である日本も大量の在庫を抱えていることから、ひなふ化羽数の約2割の減産が必要となっている。しかし、減産への取り組みは遅れており、2008年12月のひなふ化羽数は、前年同月比1.8%減の約4億4,380万羽となった。鶏肉生産量(可食処理べース、骨付き)についても、前月比では2.3%減となっているものの、前年同月比では3.2%増の97万6千トンとなった。
ブラジルの鶏肉輸出先上位7カ国
 ロシアでは食肉の輸入に当たって、関税割当制度が実施されており、毎年度低関税で輸出できる数量が割当てられる。EUや米国などには自国分の割当枠が設定されるが、ブラジル分としては設定されないため、「その他の国」の割当分の中で輸出を伸ばしてきた。しかし、ロシアは国内の畜産業保護の姿勢を年々強めてきており、鶏肉の2009年度の「その他の国」の割当分を削減する見込みである。

 こうした中で、鶏肉については、比較的金融危機の影響が少ないと見られるサウジアラビアなど中東諸国への輸出増加や新規市場としてマレーシアやメキシコが期待されている。

 なお、昨年インド向け鶏肉輸出が急拡大するという見込みが伝えられたが、業界関係者がインドに出向いて調査を行ったところ、流通施設の整備の遅れなどから、目標とされている数年中に年間30万トンの輸出量に達することは見込めないとのことが判明した。
(2008年9月1日付海外駐在員情報 http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/ar/ar20080901.htm

牛肉、豚肉輸出はロシアの外貨不足が需要減に影響

 2008年11月および12月の牛肉輸出(枝肉ベース)は、数量で前年同期比23.6%減の約23万3千トン、金額で同12.6%減の約5億7,900万ドル(51億5千万円)となった。
 
 なお、2008年の輸出については、数量で前年比16.6%減の約182万9千トン、金額で同16.3%増の約48億6,000万ドル(4,325億円)となった。
牛肉の輸出量および金額
 また、2008年11月および12月の豚肉輸出(製品重量ベース)は、数量で前年同期比51.4%減の5万6千トン、金額で同46.8%減の1億4,500万ドル(12億9千万円)となった。

 なお、2008年の輸出については、数量で前年比13.7%減の51万6千トン、金額で同18.7%増の14億4千万ドル(1,282億円)となった。
豚肉の輸出量および金額
 業界関係者によると、ロシア経済情勢は国際金融危機の下、石油価格の暴落により極度に悪化しており、ルーブルの下落を防ぐためドル買いが進められ、ロシア国内のドルが不足しているため、輸入業者への輸入信用状の供与が困難になっているとされる。ロシアの他にベネズエラ、アルジェリアなど石油輸出国からの需要減少も懸念されている。また、豚肉の輸出減少は、鶏肉と同様に主要輸出港であるサンタカリナ州のイタジャイ港が2008年11月の洪水被害で一部操業を停止したことなども影響している。

 なお、ロシアは、鶏肉同様豚肉についても、2009年度の関税割当数量枠の「その他の国」の割当分を削減する見込みである。
牛肉輸出先上位5カ国
 こうした中で、牛肉については、ブラジルのトレーサビリィティシステムの一部不備が指摘されて輸出が停滞しているEU向けの回復や、2005年の同国における口蹄疫発生により輸出が停止しているチリ向けの再開などが期待されている。

 一方、ロシアへの依存度が最も高い豚肉については、輸出開始に向け協議が進められている中国向け輸出の進展が望まれている。また、韓国向けについては、豚肉業界が市場開放を強く望んでおり、今後の動向が注目される。
【石井 清栄 平成21年1月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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