畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2009年 > 大豆偏重は穀物メジャーにとってもリスク(アルゼンチン)

大豆偏重は穀物メジャーにとってもリスク(アルゼンチン)

印刷ページ

輸送に恵まれた立地条件

 アルゼンチンの穀物生産の特徴は、中東部に位置するパンパを中心に生産が行われていることである。生産された穀物の多くはパンパの中心に位置するロサリオ市を中心としたパラナ川沿いにある河川港に集められる。
(図)穀物の輸出港
 アルゼンチンの経済の中心地でもある首都ブエノスアイレスの港は、ラプラタ川に面する河川港であるが水深5メートル程度であるため、パナマックス級輸送船の積み出しには向いていない。このため、ロサリオ市を中心としたパラナ川沿いにある河川港が穀物輸出の主力港として機能している。また、ロサリオ市は半径300キロメートル程度のパンパの中央部に位置することから、これらの港までのトラック輸送の流通体系に適している。

大豆偏重は輸出業社の収益ポートフォリオの面からもリスク

 このように輸送に恵まれた立地条件の中で、アルゼンチンの穀物生産は行われているが、実際に物流に携わっている関係者から見た問題点について、穀物メジャーの1つブンゲ社で聞き取り調査を行った。
(質問)  現状の道路整備状況で、今後も続く輸出量増加に対応できるか。
(回答)  道路の新設より既存道路の維持管理が十分でないことが問題である。しかしながら、農場で収穫物の保管が可能な袋サイロ(簡易型サイロ http://lin.alic.go.jp/alic/month/fore/2008/jan/top-sa01.htm参照)の普及により、収穫期にトラック需要が集中しないため、輸出量の増加には対応できると見込まれる。ただし、農業機械の更新頻度に比べ、トラックの更新頻度が遅れていることが心配である。
古いトラックはほ場とカントリーエレベータの往復程度にしか利用できない。
(質問)  鉄道整備の必要性はあるか。
(回答)  荷物の積み下ろしやターミナルエレベータの整備が必要になる鉄道輸送は、輸送距離が1000キロメートル以上ないとメリットが少ない。例えば、輸出港から500キロメートル離れたコルドバ州南部では輸送距離が長いため、生産された穀物は、近隣のフィードロットや養鶏向けの家畜飼料として利用している。
(質問)  アルゼンチンでは大豆生産に偏る傾向が強まっているが、輸出品目が偏ってしまうことに問題はあるのか。
(回答)  袋サイロの普及により、年間を通じて平準化して輸出することができる。しかしながら、ネコチェアやバイアブランカなど小麦の扱いの多い港は、小麦の生産量の減少に伴い輸出量も減少していることから、関連施設の遊休期間が長くなってきている。
(質問)  大豆生産に偏る傾向が続くと、いずれは大豆だけの輸出国になってしまうことが懸念されるが、どのように見ているか。
(回答)  輸出課徴金の税率が高く設定されていることから、バランスを欠いた生産が続いているが、いずれはトウモロコシや小麦の税率が大きく下がるなどして、バランスがとれたものとなることを期待している。地力維持のための作物ローテーションや連作障害・疾病の予防の観点からも、大豆に偏ることは望ましくない。また、物流に携わる立場として収益ポートフォリオの観点から、大豆だけの輸出になってしまうことは望ましくない。
【松本 隆志 平成21年7月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805