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2009/10年度のヒルトン枠配分方法を決定(アルゼンチン)

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「審査委員会」を設置し、「点数制」を導入

 国家農牧取引監督機構(ONCCA)は、9月17日付けONCCA決議7530/2009号に基づき2009/10年度のヒルトン枠(EU向けに係る一定基準を満たす骨なし高級生鮮牛肉に関する関税割当)の具体的な配分方法を制定した。

 ヒルトン枠は、EUにより当年7月1日から翌年6月30日までの1年間に28,000トンが割り当てられる。これについては、政府が毎年度輸出パッカーなどに輸出できる量を配分しており、2〜3年ごとに配分方法を見直している。2004年度〜2007年度までは、多少の変更はあったものの、2004年1月22日付け農牧水産食糧庁(SAGPyA)決議113/2004号(その後、所管はONCCAに移行)に基づき実施され(詳細は、2004年2月24日付け海外駐在員情報「ヒルトン枠の新方法が決定(アルゼンチン)」参照)、2008年度まで実施期間が延長された。

 2009/10年度以降については、まず7月16日付け大統領決議906/2009号に基づき、(1)実施期限は2012年度、(2)EUから割り当てられた年間配分数量は、28,000トン、(3)配分の対象は輸出パッカーなど−の大枠が制定された。その後、具体的な配分方法が制定されたが、その内容は、審査委員会による、「点数制」の導入などこれまでとは大きく異なっている(配分の方法については、参考の通り)。

配分数量の10%は前倒しで実施

 ONCCAは10月27日、新たな方法では審査に相当の時間を要することが見込まれたことから、9月12日付けONCCA決議7531/2009号に基づき、2009/10年度のヒルトン枠の10%(2,800トン)の数量配分をほぼ同決議7530/2009号に近い方法により前倒しで実施したことを明らかにした。

 これによると、37社の輸出パッカーに加え輸出パッカーとブリーダー協会や生産者団体が実施する16の共同プロジェクトに当該数量が配分され、このうちクイックフード社やJBSアルゼンチン社など大手輸出パッカー10社で配分数量の50%以上を占めている。なお、1社(プロジェクト)当たりの配分数量は、決議7531/2009号に基づき11〜150トンまでとなっている(ただし、パッカーなどからの申請数量が11トン以下であっても、審査で認められれば当該数量以下で配分される)。

中小パッカーを中心に不満が続出

 現段階では、上記10%しか配分されておらず、その配分結果についても、中小輸出パッカーを中心に不満が続出している。そこで、中小の輸出パッカーが主要会員となっているアルゼンチン牛肉・牛肉副産物産業および取引会議所(CICCRA)に今年度のヒルトン枠の実施方法などについて、聞き取りを行ったところ、以下の通りであった。


 「今回の制度改正および現段階での配分結果は、国内牛肉価格を抑制したい政府の意向を反映し、国内市場に牛肉を供給している一部のパッカーを明らかに優遇したものである。アルゼンチンの牛肉の80%は国内に向けられその供給は十分であることから、価格は概ね低水準で安定的に推移している。このような状況にもかかわらず、なぜ輸出パッカーが国内の牛肉供給を考慮しなければならないのか。政府は一部のパッカーを優遇することで、間接的に牛肉供給を管理したいようだ。審査項目は、これまで政府の牛肉管理政策に協力的なパッカーが有利になるよう作成されており、非常に不平等なものである。法律的にも不備な点が多い。このため、ヒルトン枠の公平な配分を求めて、近々訴訟を起こす予定である。このような状況が続けば、今年度のヒルトン枠輸出の履行は、非常に難しいのではないか。」

 ヒルトン枠は近年、年間の牛肉輸出数量ベースでは5%前後であるものの、金額ベースでは20%近くを占めており、パッカーにとっては利幅の大きい当該枠を得ることが経営上非常に重要となっている。また、ヒルトン枠の輸出価格がほかの部位の輸出価格、ひいては国内価格にも影響してくることから、今後の当該枠をめぐる動向が注目される。

(参考)
具体的な配分方法(毎年度、多少の変更はあるものの2012年度までは以下の方法で配分が行われる予定である)
1 5人の委員から成る「ヒルトン枠審査・追跡調査委員会」を設置、当該委員会が配分に係る審査項目についてONCCAの定める基準に基づき点数制(0〜10点まで)で審査し、配分数量を決定するための見解を表明する。審査内容を除き、審査結果などについて、ONCCAホームページ上で公表。
2 当該年度の配分数量は、以下の通り。
(1) 総枠の80%について各輸出パッカー(1社ごと)に配分。
(2) 総枠の10%について、輸出パッカーとブリーダー協会および生産者団体が実施する共同プロジェクトに対して配分
(3) (1)に係る追加枠として、総枠の10%を地方に配分(このうち40%は、牛の飼養頭数およびパッカー数の多いブエノスアイレス州、エントレリオス州などの5州に配分され、残る60%は上記5州以外の州に対し飼養頭数やパッカー数に応じて配分。なお、地方への配分枠の50%は輸出パッカーが所在する州の生産者または生産者協会が生産する家畜を使用しなければならない。)
3 上記2に係る審査項目は、 (注:( )内の割合は、(1)の区分に加算されるプレミアム率)

(1) 直近年度(以下同じ)の国内市場供給実績(30%)
(2) 雇用者の社会保障制度加入実績および当該制度に係る事業主負担金の支払実績(30%)
(3) 当該パッカーの平均輸出価格を応札者の平均輸出価格で除した商と当該パッカーのと畜実績を応札者全体のと畜実績で除した商をかけて算出した指数(20%)

(参考例)
パッカーA社 平均輸出価格:年間1トン当たり10,000円…(1)
応札者の平均輸出価格:同12,000円…(2)
(1)/(2)=0.83…(4)
と畜実績:年間1,000トン…(5)
応札者全体のと畜実績:同10,000トン…(6)
(5)/(6)=0.1…(7)
指数:(4)×(7)=0.083

(4) 輸出数量実績(10%)
(5) ヒルトン枠の履行実績(2%)
4 審査後の配分量の算出方法については、概ね以下の通り
(1)30%: 総得点に占める比率に応じて、審査基準の必要最低基準(点数)を満たした各輸出パッカー全社に配分
(2)25%: 上位20社に対し、総得点に占める比率に応じて配分
(3)20%: 上位15社に対し、総得点に占める比率に応じて配分
(4)10%: 上位10社に対し、総得点に占める比率に応じて配分
(5)10%: 上位5社に対し、総得点に占める比率に応じて配分
(6) 5%: 上位2社に対し、総得点に占める比率に応じて配分
 ただし、輸出パッカー1社当たりに配分される限度数量は、総枠の10%(2,800トン)とする。なお、配分を受けたパッカーは、安定的な輸出を実施するための周辺の社会資本整備の状況および流通体制に関して詳細に記述した「輸出計画書」をONCCAに提出しなければならない。
【石井 清栄 平成21年11月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805