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2009年のフィードロット数は、前年比54%増(アルゼンチン)

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肥育頭数は、前年比30%増

 国家動植物衛生機構(SENASA)はこのほど、「アルゼンチンのフィードロットに関する報告書(2009年)」 を公表した。(注)

(注): 同国のフィードロットの定義や形態、増加の原因、政府のフィードロットに対する補てん金制度などの詳細については「アルゼンチンの肉用牛生産のフィードロット化」(「畜産の情報」2008年5月号)参照
http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2008/may/gravure.htm

 これによると、同国のフィードロットは、「500頭以下」の大幅な増加をはじめほとんどの規模で増加し、2009年9月末現在で前年比54.2%増の2189施設となった。このうち、「500頭以下」の規模が全フィードロット数の60%近くを占めている。また、フィードロットで肥育されている肉用牛頭数は、同30.4%増の211万8434頭となった。
表1 肥育頭数規模別のフィードロット数および肥育頭数
 また、州別でもコルドバ州の大幅な増加をはじめほとんどの州で増加している。なお、ブエノスアイレス州、コルドバ州、サンタフェ州の3州において、施設数、肥育頭数ともに80%近くを占めている。
表2 州別のフィードロット数および肥育頭数(上位5州)
 しかし、全国約500のフィードロットが加盟しているアルゼンチンフィードロット協会(CAEHV)によれば、おおよその数は正しいものの、2007年2月から始まった補てん金の交付(国内向けフィードロットのみ)を受けるためにフィードロット数が増加しており、実質のフィードロット数には、多少の疑問が残るということであった。

 CAEHVによれば、アルゼンチンのと畜頭数は、フィードロット数の増加に伴いフィードロット由来による割合も増加しており、2008年のと畜頭数1450万頭のうち約30%(435万頭)がフィードロット由来とのことである。

 また、この状況が続けば、2009年は、と畜頭数の40%以上(500万頭以上)がフィードロット由来になると見込まれている。

 なお、2000年代前半のフィードロットにおける年間の肥育牛の平均収容率は50%前後で、季節によるばらつきがあったものの、近年は70%前後へと上昇し、季節によるばらつきも少なくなっている。

大豆栽培面積の拡大などによる放牧地減少などが原因

 フィードロット増加などの原因としては、以下の5点が挙げられる。
  1. 牛肉に関する輸出規制や耕種作物との収益の差などから、大豆栽培面積が拡大し、放牧面積が減少していること(注1)。
  2. フィードロット経営に対する政府の補てん金が同経営の収益増に貢献していること。
  3. ブエノスアイレス州、リオネグロ州、コルドバ州など一部の州の地域で依然として続いている干ばつの影響により放牧地が減少していること。
  4. 2009年7月に、EU向け輸出割当としてフィードロット由来の牛肉輸出が許可されたこと(注2)。
  5. アルゼンチンにおいてフィードロット肥育による牛肉(多少脂肪の入った牛肉)が受け入れられるようになってきたこと。
(注1): アルゼンチン政府の最近の発表などによれば、2009/10年の大豆栽培面積は1800万ヘクタール、収穫量は5000万トン以上と過去最高を記録する見込みである。
(注2): ヒルトン枠とは別に、30カ月齢以上の牛肉を対象とし、無税で年間(7月〜翌年6月まで)2万トンが割り当てられる。

 また、CAEHVに今後の見込みなどについて聞き取りしたところ、以下の通りであった。

「現在の状況が続けば、アルゼンチンのフィードロット業界は成長を続けるだろう。将来的には、と畜頭数の60%以上がフィードロット由来になるのではないか。フィードロット増加に伴うトウモロコシ需給への影響については、政府がトウモロコシをはじめとする穀物などの国内需給安定を優先する政策を採っている限り、心配はしていない。トウモロコシの国内供給が不足するおそれがある場合には、政府は輸出を止めてでも国内供給に回すであろう。また、フィードロットの運営上の課題の一つとして挙げられる環境問題については、コルドバ州やブエノスアイレス州、サンタフェ州などで法制化されてきている。協会としては、業界のさらなる発展のために、HACCPやISOなどに準拠した「肥育マニュアル」を作成し、会員を指導していくつもりである。」

 これまで、アルゼンチンの肉用牛生産といえば、パンパ地域を中心とする「放牧」のイメージが強かったが、現在のような政府の政策や大豆生産の拡大などが続く限り、同国の肉用牛生産の形態は将来的には大きく変更される可能性がある。同国のフィードロット産業の発展は、長期的にはトウモロコシ輸出などにも影響を及ぼす可能性があるだけに、今後の動向が注目される。
【石井 清栄 平成22年1月5日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805