フィードロット増加などの原因としては、以下の5点が挙げられる。
- 牛肉に関する輸出規制や耕種作物との収益の差などから、大豆栽培面積が拡大し、放牧面積が減少していること(注1)。
- フィードロット経営に対する政府の補てん金が同経営の収益増に貢献していること。
- ブエノスアイレス州、リオネグロ州、コルドバ州など一部の州の地域で依然として続いている干ばつの影響により放牧地が減少していること。
- 2009年7月に、EU向け輸出割当としてフィードロット由来の牛肉輸出が許可されたこと(注2)。
- アルゼンチンにおいてフィードロット肥育による牛肉(多少脂肪の入った牛肉)が受け入れられるようになってきたこと。
(注1): |
アルゼンチン政府の最近の発表などによれば、2009/10年の大豆栽培面積は1800万ヘクタール、収穫量は5000万トン以上と過去最高を記録する見込みである。 |
(注2): |
ヒルトン枠とは別に、30カ月齢以上の牛肉を対象とし、無税で年間(7月〜翌年6月まで)2万トンが割り当てられる。 |
また、CAEHVに今後の見込みなどについて聞き取りしたところ、以下の通りであった。
「現在の状況が続けば、アルゼンチンのフィードロット業界は成長を続けるだろう。将来的には、と畜頭数の60%以上がフィードロット由来になるのではないか。フィードロット増加に伴うトウモロコシ需給への影響については、政府がトウモロコシをはじめとする穀物などの国内需給安定を優先する政策を採っている限り、心配はしていない。トウモロコシの国内供給が不足するおそれがある場合には、政府は輸出を止めてでも国内供給に回すであろう。また、フィードロットの運営上の課題の一つとして挙げられる環境問題については、コルドバ州やブエノスアイレス州、サンタフェ州などで法制化されてきている。協会としては、業界のさらなる発展のために、HACCPやISOなどに準拠した「肥育マニュアル」を作成し、会員を指導していくつもりである。」
これまで、アルゼンチンの肉用牛生産といえば、パンパ地域を中心とする「放牧」のイメージが強かったが、現在のような政府の政策や大豆生産の拡大などが続く限り、同国の肉用牛生産の形態は将来的には大きく変更される可能性がある。同国のフィードロット産業の発展は、長期的にはトウモロコシ輸出などにも影響を及ぼす可能性があるだけに、今後の動向が注目される。