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採みつ用養蜂の生産現場(アルゼンチン)

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 アルゼンチンは、はちみつの主要輸出国であり、日本は主要輸出相手国の一つである。今回、アルゼンチンの採みつ用養蜂の生産現場(ブエノスアイレス州メルセデス市近郊(ブエノスアイレス市から西へ約100キロメートル))を調査する機会を得たので、生産状況などについて以下のとおり報告する。(注)

(注): 同国の生産者数、生産地域などについては、
平成21年5月20日付け海外駐在員情報「アルゼンチンにおける養蜂の現状」参照。
http://lin.alic.go.jp/alic/week/2009/ar/ar20090520.htm
アルゼンチンのはちみつ輸出数量および金額
2009年のはちみつ輸出

1 養蜂場について

 今回訪問した生産者は、80年以上前からメルセデス市周辺で家族経営の定飼養蜂(専業)を行っている。ブエノスアイレス州には35〜40カ所の養蜂場があり、1箱当たり1群(1匹の女王バチ)で約3,300個の巣箱(3,300群)が設置されている。また、養蜂場の1カ所当たりの面積は、50〜100ヘクタールである。

 1群当たりのハチの数は、春季は1万匹、夏季は10万匹で構成されている。ハチの行動範囲は1,500mで、クローバー、アルアルファ、ヒマワリ、タンポポなどからみつを採取している。みつの採取の最盛期は12月〜3月であり、同期間を前期・後期の2回に分けて巣箱からみつを採取する。

2 ハチの減少について

 世界的にハチが減少している中にあって、当地の養蜂家(専業)の飼養するハチの数は、あまり減少していない。

3 ハチの種類およびアフリカ化ミツバチについて

 ブエノスアイレス州では、セイヨウミツバチ(イタリア種)が飼育されている。アフリカ化ミツバチは、ブエノスアイレス州、サンタフェ州、エントレリオス州において飼養されておらず、フォルモサ州やチャコ州など北部の暑い地域に限定して存在している。

 アフリカ化ミツバチは、セイヨウミツバチよりも小さく、色が黒く、気性が荒いので、仮にアフリカ化ミツバチがセイヨウミツバチに混在したとしても、養蜂業者であればすぐに判別できる。養蜂業者は、アフリカ化ミツバチが当地に流入しないよう十分管理している。また、ブエノスアイレス州農務部でも、アフリカ化ミツバチが混在していないか、種の確認を行っている。

4 年間収穫量について

 現在の1群当たりのはちみつ年間収穫量は12キログラム程度である。25年前(50〜90キログラム)と比較して大幅に減少しているが、収益は比較的安定した状態となっている。収穫量が減少した原因としては、近年の大豆価格高騰により、パンパおよびその周辺で大豆の作付面積が増加し(大豆からは、はちみつがほとんど採取できない)、草地が減少していることなどから、主要みつ源であるクローバーやアルファルファなどの牧草が減少していることなどが考えられる。

5 女王バチの生産および輸出について

 基本的に1群に1匹の女王バチがいる。通常は、生産者が女王バチの生産を行っており、おおむね2年ごとに年間3万〜4万匹を更新している(女王バチの寿命は5〜6年)。生産方法としては、生まれてから24時間以内に女王バチとすべき幼虫の巣にローヤルゼリーを付けている。働きバチはその幼虫を女王バチ候補と思いローヤルゼリーを与える習性があるので、人工的に女王バチを生産することができる。10日間ほどで女王バチの巣ができ、12日間程度で女王バチは1日5,000個の卵を産み出すようになる。
女王バチの巣
女王バチの巣
 また、アルゼンチンは女王バチの輸出も行っており、フランス、スペイン、ポルトガル、レバノンなどに輸出している。女王バチと働きバチ7〜8匹および女王バチの餌となるローヤルゼリーと砂糖水の入ったマッチ箱ほどの大きさの箱20〜30箱が輸送用ケースにぶら下がった形でおさめられ、衛生条件などに問題がなければ、空路により2〜3日で目的地に運ばれる。
輸出用の箱
輸出用の箱
アルゼンチンの女王バチの輸出数量および金額

7 花粉交配利用について

 当地のハチは、ヒマワリ、リンゴ、ナシなどの花粉交配に利用されているが、その種類はあまり多くない。

8 疾病(チョーク病、バロア病、ノゼマ病)対策について

 州間移動の際、以下の疾病について、SENASA(国家動植物衛生機構)の検査が義務付けられている。
検査の結果、問題がなければ「移動証明書」が発行される。
  1. チョーク病(真菌(Ascosphaera apis)を原因とする届出伝染病)
    全巣箱の30%の検査により、陽性が確認された後全群検査が実施される。感染率が5%以下であれば、感染した巣箱を除去して移動が許可され、5%以上であれば、全群の移動が禁止される。20%以上の感染率が確認された場合には、抗生物質の投与などを行わなければならないが、巣箱を償却し、新しいものに更新するケースが多い。
  2. バロア病(ミツバチヘギイダダニを原因とする届出伝染病)
    全巣箱の10%の中から150〜200匹を検査し、感染率が3%以下であれば、感染した巣箱を除去して移動が許可される。3%以上の感染率が確認された場合には、治療薬の投与などを行わなければならない。
  3. ノゼマ病(原虫(Nosema apis)を原因とする届出伝染病)については、ハチの栄養不足により生じることから、越冬の前に液状トウモロコシや砂糖水を与えておく必要がある。
 なお、女王バチについてSENASAは、上記疾病を含む年3回の検査を義務付けている。
【石井 清栄 平成22年2月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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