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ASEAN6カ国でほぼ全品目の関税が撤廃

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99.11%の品目で関税が撤廃

 2010年1月1日、ASEAN自由貿易協定(AFTA)に基づき、ASEAN6カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)でほぼ全品目の関税が撤廃された。すでに共通効果特恵関税(CEPT)の枠組みの下で、AHTN(ASEAN Harmonized Tariff Nomenclature)関税分類に基づく54,457品目の関税が撤廃されていたが、今回新たに7,881品目の関税が撤廃されたことにより、全品目のうち99.11%の関税が撤廃されたことになる。これにより、域内の平均関税率は2009年の0.79%から0.05%まで下がる。なお、各国の事情により、一般の品目とは異なる取り扱いが認められたセンシティブ品目(SL)や高度センシティブ品目(HSL)が設定されており、SLについては、2015年の完全撤廃までの間は5%以内の関税が維持される。HSLについては、一定期間内での関税撤廃が求められることになる。また、国家安全保障などに係る一部の品目については、一般例外品目(GEL)として、関税撤廃の対象から除外されている。農産品では、インドネシアがコメや砂糖、フィリピンがコメをHSLとしているほか、タイは切り花、ジャガイモ、コプラヤシ、コーヒー豆の4品目、フィリピンは豚、鶏、牛肉、豚肉、鶏肉、野菜、キャッサバ、キャッサバでん粉などをSLとしている。

 ASEAN新メンバーである4カ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)については、今年から域内平均関税率が3%から2.61%まで下がったが、2015年1月1日には原則としてすべての品目の関税が撤廃される。
ただし、SLについては、2018年1月1日まで撤廃時期を遅らせることが認められている。

AFTA関税撤廃実施に対する各国の反応等

インドネシア

 アンタラ通信によると、雇用保険会社オペレーションディレクターのアマッド氏は、次のように語った。
今年から始まるAFTAなどのFTAが国内産業に与える影響について、多くの研究によれば、国内産業の業績が低下することにより、約250万人の労働者が解雇の危機に直面するだろうと予測している。また、最も影響を受ける産業分野は、皮革、服飾、繊維、鉄鋼であり、労働集約的で小規模な企業の多くが影響を受けるとしている。実際に影響が出るのはFTA開始から約8カ月後であるが、もし、特定の産業の体力が広範囲に弱まることになれば、政府は影響緩和策を講じると確信している。

マレーシア

 デイリー・エクスプレス紙によると、ムスタパ国際貿易産業相は、次のように語った。マレーシアは、AFTAにおいて、1,943品目の関税撤廃を約束している。AFTAは、これまでASEAN内外ともに貿易量を増加させる方向に導いてきた。2008年のASEAN域内の貿易総額は4530億ドルでASEAN域外の貿易額の26.7%に当たる。10年前のASEAN域内の貿易総額は、わずか1200億ドルであった。現在、マレーシアの貿易額は、ASEAN域内全体の25%を占めており、過去10年間は年平均10%の成長率を示してきた。2009年1月〜9月のASEAN域内の貿易額は513億ドルであり、世界全体に対する貿易額の25.3%を占めている。このように、ASEANはマレーシアにとって重要な市場であり続けるであろう。

フィリピン

 フィリピン通信によると、フィリピンのアロヨ大統領は、ASEAN6カ国から輸入される物品の関税を撤廃する大統領令850号(EO850)を発出し、2010年1月1日に発効した。EO850は、ASEAN域内の関税、非関税障壁の撤廃や外国からの直接投資の促進を通じて、世界市場におけるASEANの産品の競争力を増加させることを目的としている。なお、HSLであるコメは、AFTAのCEPTの枠組みの下で、今年から段階的に関税の引き下げを行う予定であったが、延期されることになった。

タイ

 コム・チャット・ルック紙によると、農業・農協銀行研究センターは、自由貿易の開始により影響を受ける農産品として、コメ、茶、コーヒー豆、パームオイル、大豆、大豆かす、飼料用トウモロコシ、ニンニク、ジャガイモなどを挙げている。特に、競争力の弱い小規模農家への影響が最も大きいと予測している。一方、恩恵を受ける農産品は、生乳、フレーバードミルク(※)、脱脂粉乳、砂糖、乾燥ロンガン、生糸、タマネギ、タマネギの種子に限られるとしている。
 なお、政府はこの自由貿易の開始による影響を緩和するため、FTA基金を設けたが、この基金を利用できるのは小規模農家の一部に限られるという。

 ※タイ保健省の省令によると、フレーバードミルクとは、牛乳または粉乳を使い、香りもしくは味、または健康に危害を与えないその他の成分を追加したものをいう。

 また、バンコク・ポスト紙によると、ポーンティワ商務相は、AFTAに基づく関税撤廃によって、ASEAN域内での貿易額は2009年の20%から2010年は25〜30%の成長率が期待できると語った。2009年のタイの貿易額は2800億ドルで、そのうち輸出額が1500億ドルであった。タイ商工会議所大学の国際貿易中央研究所は、2010年のタイの輸出額は前年比10.5%増の1669億ドル、輸入額は前年比14.4%増の1499億ドルと予測している。ただし、今年の輸出額の増加は、AFTAなどのFTAによる影響よりも昨年の世界的経済不況からの回復による影響の方が大きいだろうとしている。

中国とのFTAで90%の品目の関税を撤廃、インド、豪州・NZともFTAが発効

 ASEAN6カ国は、2005年に発効した中国との中国ASEAN自由貿易協定(CAFTA)に基づき、2010年から90%の品目で関税を撤廃した。これにより、6カ国の中国製品に対する平均関税率が12.8%から0.6%に引き下げられた。また、ASEAN新メンバー4カ国は2015年までに90%の関税が撤廃される。ASEAN事務局のプレスリリースによれば、CAFTAは欧州連合(EU)、北米自由貿易協定(NAFTA)に次ぐ世界3位の自由貿易地域となり、人口19億人、GDPは6.6兆ドル、貿易額は4.3兆ドルに達するとしている。

 また、インドとのFTA(2009年8月19日付け海外駐在員情報参照)や、豪州・NZとのFTAも2010年に発効した。なお、インドとは2016年までに80%の品目の関税を段階的に引き下げつつ最終的に撤廃、豪州・NZとは2020年までに96%の品目の関税を段階的に引き下げつつ最終的に撤廃する。
【吉村 力 平成22年1月25日発】
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