需給動向 海外

◆米 国◆

明暗を分ける乳製品の卸売価格


◇絵でみる需給動向◇


増加し続ける生乳生産量

  米国農務省(USDA)によると、2008年9月の生乳生産量は685万7千トンとなり、前年同月比で1.7%増加した。1〜9月の累計では6,489万3千トンと前年同期を2.5%上回っている。

 2008年に入ってから生産者乳価が下落する中、生産者団体は10月24日、今年の夏に続いて今年2度目の自己負担による搾乳牛とう汰事業(CWT事業)を行うと公表した。とう汰参加者の募集期間は11月24日までとしており、12月以降にとう汰が開始されることになる。

 なお、USDAが11月10日に公表した予測によると、2008年の年平均搾乳牛飼養頭数は、前月予測(10月)と同じ924万5千頭(前年比0.9%増)に、また、2009年も前月と同じ926万5千頭(前年比2.2%増)になるとしている。一方、8月、9月の1頭当たり乳量の実績が予想を上回ったことや飼料価格が低下していることから、2008年の生乳生産量は、前月予測を9万トン上回る8,609万トン(前年比2.3%増)に、また、2009年は前月を18万トン上回る8,686万トン(前年比0.9%増)に上方修正されている。

生産量は脱脂粉乳減でバター、チーズは増加

 脱脂粉乳の9月の生産量は3万9千トンと前年同月比4.0%減となり、今年初めて前年同月を下回った。脱脂粉乳の生産は毎年春に増加し秋から冬にかけて減少する傾向があり、前月の生産量から25.1%下回った。

 一方、脱脂粉乳の9月末在庫量は6万5千トンと、前月比で7.2%減少した。しかし、前年同月に比べ20.3%以上回っており、2007年7月以降、前年同月を15カ月連続で上回って推移している。

図1 脱脂粉乳の生産量

 バターの9月の生産量は5万5千トンとなった。バターはアイスクリーム向けのクリーム需要が減退する秋に生産が増えることから、前月比では4.8%増加し、前年同月比では7.4%増と、2005年以降、前年同月を上回る状況が続いている。

 バターの9月末在庫量は8万4千トンと、前年同月の水準を22.6%下回った。好調な輸出需要などを背景に、今年5月以降前年を下回る水準で推移している。

図2 バターの生産量

 チーズの9月の生産量は36万1千トンとなり、前年同月の水準を2.3%上回った。今年に入り、ほぼ一貫して前年同月の生産量を上回って推移している。

 このうち、チェダーチーズの生産量は10万7千トン(前年同月比2.2%増)となり、4月以降6カ月続けて前年同月を上回った。

 一方、モッツァレラチーズの生産量は11万7千トンと前年同月の水準を3.2%下回った。モッツァレラチーズの生産量は20年以上にわたってほぼ一貫して増加してきたが、今年3月以降前年同月を下回っており、2008年の年間生産量は減少に転じるものと見込まれる。

 なお、チェダーチーズの9月末在庫量は25万1千トンで、前年同月の水準を2.5%上回り、6月以降は前年を上回って推移している。

 また、モッツァレラチーズの在庫量も11万9千トンと、前年同月の水準を3.3%上回り、こちらも6月以降前年を上回って推移している。

図3 チェダーチーズの在庫量


明暗を分ける卸売価格

 脱脂粉乳の卸売価格は、国際価格の急落を受けて下降し、10月はポンド当たり96.8セント(キログラム当たり211円:1ドル=99円)とついに100セントを割り込んだ。9月に比べて27セント(21.8%)の大幅下落となり、前年同月比では51.7%安と半値以下となった。

 なお、USDAは2009年の脱脂粉乳の卸売価格について、国際需要の弱まりとこの時期にしては供給量が多くなることから2008年の平均価格より2割程度下がると予測している。

 卸売価格が落ち込む中、政府(商品金融公社:CCC)は10月7日、乳製品価格支持制度に基づき乳業者から申請のあった脱脂粉乳を買い上げた。乳製品価格支持制度は、事業者の申請に応じてCCCが乳製品の買入れを行うもので、脱脂粉乳の政府買入れ価格は同80セントである。CCCによる買い上げは2006年7月以来であり、11月14日までに累計2万6千トンの脱脂粉乳の買い上げが行われた。なお、USDAは2008年の第4四半期に3万4千トンの脱脂粉乳買上げが行われると予測している。

 バターの卸売価格は国際価格が比較的堅調なこともあり、10月は同173.2セント(同378円)と前年同月を33.0%上回った。2月以降は右肩上がりで推移する中、10月も前月比で2.0%上昇し2008年の最高値を記録した。

 なお、USDAは2009年のバターの卸売価格について、2008年の平均価格より下がると予測している。

 チーズの10月の卸売価格は同247.0セント(同539円)となり、前月を1.1%、前年同月を2.0%上回った。

 アメリカ乳製品輸出協会(USDEC)によると、10月のチェダーチーズの国際市場は軟化傾向にあり、10月半ばに同167〜181セント(同364〜395円)であったチェダーチーズの輸出価格は11月に入って同14セント下落している。

 USDAは2009年のチーズの卸売価格については、供給量が多くなることで、2008年の平均価格より1割程度下がると予測している。


元のページに戻る