農林水産省「食肉流通統計」によると、平成21年4月の牛枝肉卸売価格(東京市場)の省令価格は、18年12月以降連続して前年同月を下回り、キログラム当たり1,042円(前年同月比9.4%安)となった。規格別の価格を見ると、軒並み前年同月を下回っており、高級和牛である去勢和牛A−5は、2,260円(同7.6%安)、A−4は1,841円(同9.5%安)とかなりの程度下回り、交雑種めす牛においても、B−3が1,108円(同12.8%安)、B−2が955円(同11.6%安)、乳用種去勢牛B−2は775円(同4.8%安)といずれもかなり大きく下回った(図1)。前月と比較するといずれも値を上げているものの、引き続き景気低迷による末端消費の不振などを反映し、弱含みの展開となった。
このような状況を反映し、当機構が公表した肉用牛肥育経営安定対策事業(マルキン)および肥育牛生産者収益性低下緊急対策事業(補完マルキン)に係る四半期推定所得等の算定結果(21年1〜3月期)によると、肉専用種の場合、1頭当たりの粗収益が約88万円(前期比約30,000円減)と落ち込む一方で家族労働費などの生産コストは約101万円と約14万円の赤字となり、交雑種や乳用種と同様となっている。それぞれの事業による補てん金は、マルキンでは、肉専用種は3期連続で発動され前期と同額の1頭当たり59,500円(全国平均)など、全ての品種で交付されることとなった。また、補完マルキンでは、肉専用種は枝肉価格の下落が響き、収益が悪化し前期と比べ14,200円増加の32,400円などが追加交付された。収益面で若干の改善が見られたが、依然として深刻な経営を強いられている。
補てんが発動された主な要因としては、導入時の子牛価格が高水準であったことや配合飼料価格の値上がり、枝肉価格の低迷が重なったことが要因と考えられる。 なお、5月の枝肉価格(東京市場、省令価格、速報)は1,067円と前年同月を6.9%下回ったものの、前月比では2.4%高と値を上げており、今後の牛肉消費の動向が注目される。
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