2008年の輸出額は過去最高を更新
2008年の米国の乳製品輸出額は、前年から続いた乳製品輸出量の拡大と国際的な乳製品価格の上昇により、上半期に大きく増加した。下半期に入ってからは、オセアニアの生産回復による輸出量の減少と国際価格の下落の影響により輸出額は急速に減少したが、2008年全体では前年を26.3%上回る37億5,515万ドル(3,717億6千万円:1ドル=99円)に達し、5年連続で乳製品の輸出額が過去最高水準を更新する結果となった。
図1は米国の乳製品の輸出金額と主要乳製品別の品目構成を示したものである。2008年は脱脂粉乳の輸出額が前年を65.2%上回る13億8千万ドル(1,366億2千万円)に急増し、全輸出額に占める割合が前年の28.1%から36.8%へと大きく拡大したことが特徴である。また、バターとチーズの輸出額も、それぞれ2億7,165万ドル(前年比143.4%増)、5億6,976万ドル(同47.0%増)に増加し、いずれも過去最高額を記録している。一方、長く米国の輸出の主力であったホエイや乳糖は、前年の国際価格高騰の影響による輸出需要の低迷により輸出数量が大きく減少し、結果的に輸出額もそれぞれ5億1,446万ドル(同23.4%減)、1億8,282万ドル(同39.8%減)に減少している。
図1 米国の乳製品輸出金額と品目構成
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乳製品の貿易収支は再び赤字に
前述のとおり、2008年の後半に入って乳製品の輸出額は急速に減少局面に入っている。輸出額の動向を月別に見ると、単月ベースの輸出額は昨年5月の3億7,549万ドル(371億7千万円)をピークに減少に転じ、10月以降は4カ月連続で前年実績を下回っている。2009年1月の乳製品輸出額は前年比46.3%減の1億7,107万ドル(169億4千万円)となり、ほぼ2年ぶりに2億ドルを下回った。
これに対し、月によるばらつきこそあるものの、米国の乳製品輸入額はほぼ2億5千万ドル前後の水準を維持しており、2009年1月は前年比7.7%減の2億3,035万ドル(228億円)となった。この結果、米国の乳製品貿易収支は昨年10月から4カ月連続で赤字を記録することとなった。
米国の乳製品貿易収支は2007年5月に黒字に転じて以降、ほぼ1年半にわたって輸出超過の状況が続いてきた。年ベースで見ても、2008年の乳製品貿易黒字額は、14年ぶりに貿易黒字に転じた2007年を大きく上回る7億695億ドル(699億9千万円)を記録していた。乳製品の輸出量が伸び悩み始めた昨年夏以降も、米国の業界内には先行きを楽観視する意見が根強く残っていたが、昨夏の中国のメラミン汚染問題とそれに次ぐ世界的な不況の影響で、特に乳製品の輸出単価は急速に下落しており、2009年の乳製品輸出額が2008年を下回ることは確実な情勢である(図2)。
なお、米国農務省(USDA)が2月26日に公表した「Outlook for U. S. Agricultural Trade」によると、2009年度(2008年10月〜2009年9月)の乳製品輸出予測額が昨年11月の予測を4億ドル下回る27億ドル(2,673億円)とされる一方、輸入予測額は1億ドルの下方修正にとどまって29億ドル(2,871億円)とされており、2009年度の乳製品貿易は再び輸入超過に転じると予測されている。
図2 米国の乳製品貿易収支の推移
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脱脂粉乳の政府保有在庫が増大
図3は脱脂粉乳の工場出荷価格、平均輸出単価、乳業保有在庫、政府保有在庫(商品金融公社(CCC)の累計買入数量)の動向をまとめたものである。
脱脂粉乳の輸出価格は工場出荷価格から2カ月前後遅れて変動する傾向が見られるが、これは、取引契約と実際の輸出との間に2カ月程度のタイムラグが生じるためである。一方、2007年前半の価格上昇局面では工場出荷価格の上昇が速やかに輸出価格に反映されたのに対し、2008年には国内価格が下落していたにもかかわらず輸出価格は比較的高い水準で「持ちこたえて」いた。しかし、10月の初めからCCCが乳製品の価格支持買入を開始したことに伴い、2カ月後の12月の輸出単価は11月よりキログラム当たり1.06ドル安の2.37ドルに急落している。米国の脱脂粉乳輸出の大半が大手酪農協の共同出資会社により取り扱われていることを考え併せると、政府買入の開始が輸出価格下落の「引き金」を引いた形になっているのは非常に興味深い。
CCCによる買入れの進展により、乳業が保有する2月末の脱脂粉乳在庫数量(速報値)は前月末よりわずかに減少して8万5,600トン(前年比18.5%増)となった。その一方で、CCCが買入れた脱脂粉乳の累計数量は2月末の段階で8万4,100トンと乳業保有在庫数量に迫り、3月末にはこの数量が9万5,000トンにまで増加している。
このような中、ヴィルサック農務長官は3月26日に、CCCの保有する脱脂粉乳在庫を国内栄養支援対策向けに放出することを公表した(平成21年3月27日付け海外駐在員情報(http://lin.alic.go.jp/alic/week/2009/us/us20090327.htm)参照)。この措置により、価格回復の重しとなっていた脱脂粉乳の処理が進むのか、また、国内向け出荷価格や輸出価格にどのような影響が出てくるのか、今後の動きが注目される。
図3 脱脂粉乳の価格と在庫量の推移
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(参考)主要乳製品の生産量と貿易量(2008年)
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