需給動向 海外

◆米 国◆

好調な乳価の一方、生産者は需給引き締めのため乳用牛
とう汰事業を実施


◇絵でみる需給動向◇


搾乳牛頭数は2.0%減の一方、生乳生産量は1.5%増

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が5月18日に公表した「Milk Production」によると、搾乳牛飼養頭数は、全国生乳生産者連盟(NMPF)が運営する酪農協共同基金(Cooperative Working Together :CWT)を原資として、昨年3回実施された乳用牛とう汰事業の効果もあり昨年3月以降一貫して前年同月を下回って推移し、4月は前年同月を2.0%下回る909万6千頭となった。これに対し、1頭当たり乳量は一貫して前年同月を上回っており、4月も前年同月比3.5%増となった。この結果、生乳生産量は、昨年8月以降、前年同月をわずかに下回って推移したが、3月は前年同月比0.6%増、4月は同1.5%増と2カ月連続で前年水準を上回っている。

図8 生乳生産量等の前年同月比の推移
資料:USDA/NASS 「MILK PRODUCTION」

 

好調な乳価の中、さらなる乳用牛とう汰事業の実施

 米国の生乳価格は、乳製品の国際需給の改善などにより回復の兆しがみられ、NASSが5月28日に公表した「Agricultural Prices」によると、4月の生乳の生産者販売価格は前年同月を29.3%上回る100ポンド当たり15.0ドル(キログラム当たり約30円:1ドル=92円)となった。

 このように乳価は堅調にあるものの、上述のとおり生乳生産量が増加傾向に転じていることから、需給緩和が深刻化する前に生産の絞り込みを図ろうと、NMPFは5月28日、CWTを通じた今年初の乳用牛とう汰事業の実施を発表した。今回の乳用牛とう汰事業の補償単価は、生乳100ポンド当たり最高で3.75ドル(キログラム当たり約8円)と過去最低の水準に設定されている。

高騰する廃用雌牛価格

 補償単価が低い理由としてNMPFは、「最近の堅調な牛肉価格などを踏まえた結果」としている。「Agricultural Prices」によると4月の廃用雌牛の生産者受取価格は、前年同月を19.8%上回る100ポンド当たり57.5ドル(キログラム当たり約117円)、また、5月の速報値も前年同月を21.2%上回る同59.5ドル(同約121円)となっている。

 こうした廃用雌牛価格の高騰は、主要供給国である豪州からの供給が大幅に減少し、ひき肉用牛肉の需給がひっ迫していることが要因とされる。

 一部関係者からは、「この補償単価では多くの酪農家を参加させることは難しいであろう」との声も聞こえており、どの程度の申請がなされるのか注目されるところである。

 なお、同省経済調査局(ERS)の5月19日の需給予測によると、2010年の生乳生産量は前年を0.5%上回る1902億ポンド(8627万トン)、生産者販売価格は前年を21.9〜25.8%上回る100ポンド当たり15.65ドル〜16.15ドル(キログラム当たり約32〜33円)と予測されている。これは、NMPFの乳用牛とう汰事業実施を反映していないため、とう汰事業が効果的に実施されれば価格のさらなる上昇が見込まれる。

図9 廃用雌牛価格の推移
資料:USDA/NASS 「AGRICULTURAL PRICES」

 

 


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