海外トピックス


総額3億ユーロの特別酪農基金の酪農主要国における配分方法を調査(EU)


運用は加盟国毎に大きく異なる状況

 既報注1のとおり、2008年秋以降に顕在化した域内外の乳製品市場の低迷に伴い域内の生乳価格が大幅に低下し、酪農家の経営が大変厳しくなったことから、2009年11月に開催されたEU財務大臣会合において総額3億ユーロ(約378億円:1ユーロ=126円)の緊急措置が合意され、12月3日に正式に採択された。

 この緊急措置は特別酪農基金と名付けられ、2008/09クオータ年度注2における各加盟国の生乳生産量に応じて下図のとおり配分されることとなったが、加盟国内でのさらなる配分については、委員会規則1233/2009第1条において、「具体的な基準に基づき」、「非差別的な方法で」、「競争をゆがめない」ように行うことが規定されているものの、実際の運用については各加盟国の裁量に委ねられる形となっている。また、特別酪農基金の酪農家への交付は、同規則第2条において遅くとも2010年6月30日までに行うことと規定されている。

加盟国別の特別酪農基金配分額
資料:委員会規則1233/2009

 このように、特別酪農基金の大枠については既に決定、公表されているところであるが、各加盟国の運用状況については必ずしも公表されていない状況にあるため、(独)農畜産業振興機構ブリュッセル事務所において調査を行ったところ、表のとおりとなった。

主要酪農国における特別酪農基金の運用状況

 表の中で最も複雑な仕組みとなっているのはポルトガルで、原則、2008/09クオータ年度の生乳生産量に応じて支給されるものの、生乳生産量の増加に応じ支給単価が漸減し、650トンで支給が打ち切られることとなっている。一方、最も単純なのはアイルランドで、規模に関係なく一戸当たり590ユーロ(74,340円)が支給されることとなっている。このように、酪農特別基金の酪農家への配分一つをとっても、その運用は加盟国毎に大きく異なる状況となっており、この柔軟性がEUの畜産施策の全体像を把握する上での障害の一つとなっているとも言えよう。

注1:(1)酪農基金措置の経緯

「酪農危機打開に向けた 欧州委員会の施策〜CAPヘルスチェック合意以降の動きについて〜」
http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2009/dec/gravure01.htm

   (2)酪農基金の規模が当初の2.8億ユーロから3億ユーロに拡大された経緯

「欧州委、介入買入在庫のうちバター5.1万トン、脱脂粉乳6.5万トンの市場外処分を採択」
http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2010/jan/milk-eu.htm

注2:2008年4月〜2009年3月


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