2010年1〜7月、チーズの生産量が増加
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2010年7月の乳製品の生産量は、バターが前年同月比2.9%減の50,355トン、チーズが同4.7%増の400,197トン、脱脂粉乳が同1.0%減の59,792トンとなった。これまでの累計生産量(2010年1〜7月)を見ると、バターが前年同期比5.6%減の423,600トン、チーズが同3.0%増の2,727,431トン、脱脂粉乳が同1.7%減の434,664トンとなっており、今年に入って前年を上回って推移している生乳生産は、主にチーズに仕向けられていることが分かる。
バターの生産が減少する中、需要が増加した結果、在庫は大幅に減少
バターについては、生産が減少傾向にある中、国内消費が堅調に推移していることなどから、2010年7月時点の在庫は前年同月比24.0%減の90,552トンと、前年を大幅に下回る水準となった。
図6 バター在庫量の推移 |
|
資料:USDA/NASS「ColdStorage」 |
バターの需給が締まっている状況を反映して、2010年8月のバターの卸売価格(シカゴ・マーカンタイルのスポット取引価格)は前年比65.8%高の1ポンド当たり1.99ドル(キログラム当たり約2円:1ドル=85円)と前年を大幅に上回った。しかし、バターの卸売価格が高値で推移しているにもかかわらず、バターの生産が上向く兆候は現時点では認められない。これは、今年の乳脂肪率が前年を下回っており、生乳生産量の増加ほど増えていないことや、バター製造業者が、チーズなどバター以外の乳製品に、クリームを仕向けていることなどが理由として考えられる。また、2010年1〜7月の地域別のバター生産量を見ると、大西洋沿岸部、西部がそれぞれ前年同期比0.6%増の40,879トン、9.0%増の229,391トンと増加しているのに対して、中部は22.3%減の153,331トンと大幅に落ち込んでいる。これはランド・オーレイクス社が昨年後半、ウイスコンシン州のバター工場を閉鎖したことが影響しているものと考えられる。
図7 乳脂肪率の推移 |
|
資料:USDA/NASS「Agricultural Prices」 |
表6 乳脂肪生産量と仕向先(1月〜6月) |
|
資料:Informa Economis社調べ |
バターの国内供給を優先するため、輸出補助金を中止
例年、年末に向けてバター需要が高まることから、7月時点では十分な在庫が必要であるが、現在の水準では今後のバター需給のひっ迫が懸念される状況にある。このため、全国生乳生産者連盟(NMPF)はバターの国内供給を優先するため、本年7月より行っている酪農協共同基金(CWT)によるバターへの輸出補助金を中止することを決定した。なお、CWTによって、これまで約1万5千トンのバターおよび無水乳脂肪に対する補助金が承認されている。また、USDAはバターの卸売価格については、生乳生産が増加する来年には落ち着くと見込んでいる。
|