厚生労働省は平成25年1月28日、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会・伝達性海綿状脳症対策部会合同会議を開催し、牛海綿状脳症(BSE)対策の見直しについて審議を行った。この結果、国内措置および輸入条件ともに、2月1日から見直されることとなった。(輸入措置については即日施行、国内措置については4月1日から施行)
輸入措置については、4カ国からの輸入条件が見直された。月齢20カ月齢以下に輸入が制限されていた米国産とカナダ産については、30カ月齢以下の牛肉および内臓が輸入可能となった。さらに、月齢に関わらず輸入が禁止されていたフランス産とオランダ産については、フランス産が30カ月齢以下、オランダ産は12カ月齢以下(主に子牛肉)の牛肉および内臓の輸入が可能となった。なお、特定危険部位(SRM)の範囲も改正され、扁桃および回腸遠位部が除去された牛肉および内臓が対象となる(表1)。
表1 各国の対日輸出条件 |
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資料:厚生労働省
注:米国産については、米国農務省(USDA)30カ月齢未満証明品質システ
ム評価プログラム(QSAプログラム)に基づき、30カ月齢未満が輸出対象
となる。
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米国産牛肉の動向に注目
米国は、平成15年までは、日本の牛肉供給量全体の約3割、輸入牛肉においては約5割のシェアを占める主要な輸入相手国であった。しかし、平成15年12月に米国でBSEが発生したことを受け、輸入が停止された。平成17年12月に20カ月齢以下のものに限り輸入が再開されたが、輸入禁止部位の混載事例発生により、平成18年1月に再び輸入が停止された。その後、平成18年7月に輸入が再開され、数量は徐々に増加しているものの、平成15年の水準に回復するには至っていない(図1)。
米国食肉輸出連合会(USMEF)によると、米国でと畜される肉牛のうち、30カ月齢未満の割合は9割を超えるとのことであり、今回の月齢緩和による対日向け輸出が可能な牛肉の絶対量が増えることになるため、特に牛丼や焼肉用として使われる「ショートプレート(ばら)」や「かたロース」は、外食店や量販店からの需要増加が期待される。
対日向けオファー価格については、穀物価格高騰に伴う現地生体高、昨年末からの円安基調、韓国や香港等との競合などにより、それほど下がらないとの見方も多い。
一方、米国内での需要が少なく、他国との競合も少ないタンについては、日本向け輸出量が増加することで、価格が低下するとみられる。
輸入業者や食肉卸売業者など国内の流通関係者は、米国産牛肉の輸入増加を見込んでいると言われており、外食産業も米国産牛肉の調達に意欲的とのことである。しかし、豪州産牛肉をメインに扱っている量販店は慎重な姿勢を見せているとの報道もあるなど、今回の月齢緩和の受け取り方は各社の立場によって様々であると思われる。
なお、大手量販店では米国産牛肉セールを実施しているところもあるが、2月1日に現地でと畜されたとしても、パッカーでの加工処理や海上輸送、通関手続きなどを経て、国内流通するまでに1カ月程度はかかるため、今回の月齢緩和対象となる牛肉が量販店の店頭に並ぶのは3月以降とみられる。
図1 牛肉生産量・国別輸入量の推移(暦年ベース) |
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資料:農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」
注1 :部分肉ベース。
注2 :煮沸肉、ほほ肉、頭肉を含む。
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